アジアの子どもたちの絵日記集2021-2022
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佐さとう藤 一いちろう郎 選考委員長洋画家東京藝術大学名誉教授、東北生活文化大学学長 三菱アジア子ども絵日記フェスタに、参加してもう10年を超えましたが、回を重ねるにつれて「グローバルな地球社会」が進展し、その影響が子どもの絵にも色濃く出ています。例えば、コロナ禍で家庭での生活、学校での生活がどのように変わったのか。そのようなコロナ禍に対処することが、子どもの目を通して絵となり、表現されていたように思います。アジアのどこの地域であろうと、子どもたちの、身の回りの世の中に対する「祈りの感情」が横たわり、家族の中で起きたさまざまな出来事を印象深く、そして楽しげに、絵にしています。国こくさいせんこういいんかい際選考委員会齋さいとう藤 芽め画家東京藝術大学教授 今回で私は3回目の参加になりますが、今期は他の審査員方と一堂に会した作品を選考することが出来、とてもエキサイティングでした。 年々カラフルさが増してきて、子どもたちの技巧的な上手さがどんどんアップしていることに驚くとともに、すごく教育されているな、と思いました。目覚ましい成長を感じた中で、特に色彩に関しては、「これはどんな色なんだろう?」と思うくらい色彩が豊かで、本当に細かい中間色までその大おおいし石 芳よしの野 選考委員写真家 アジアの子どもたちが描いた絵と日記…私はこれらから今回もたくさん勉強させてもらい、刺激を受けました。 子どもたち自身にとっても、身の回りや生活が新型コロナウイルスの影響を受け、とても大変だったにも関わらず、子どもたちひとりひとりが一生懸命生きていたり、自然の中で楽しんでいたり、家族と仲良く過ごしていたりということがひしひしと伝わってきて、コロナ禍で憂うつだった私の気持ちもすごく元気づけられました。たくさん池いけがみ上 彰あきら 選考委員ジャーナリスト名城大学教授 絵日記に登場する宗教行事は、イスラム教あり、キリスト教あり、ヒンズー教に仏教。アジアは実に多彩だと痛感します。 こんな多彩な数々の中から、どうやって1位や2位をつけたらいいのか。毎回悩むのですが、今回は一段と悩みが多かったように思えます。というのも、それだけレベルが向上したからです。 三菱アジア子ども絵日記フェスタが始まった当初は、国によっては色彩に乏しく、いかにも途上国というイメージのところもありました。同じアジアでも、格差の大きさを知ることになったのですが、回を追うごとに、色彩豊かな絵日記が増里さとなか中 満まマンガ家大阪芸術大学キャラクター造形学科教授 審査会が終わって思うことは、国によって色いろな習慣があるな、ということです。 子どもたちが絵日記を描くという習慣…日本では当たり前ですが、こういった習慣が根付いていなかった国もあると思います。ですが、このように絵日記という形で、子どもが日常どのようなことを感じ、どのような生活を送っているかを伝えることは、お互いの大切に思っていることは何かということを知ることにもつながるので、とても素晴らしいと思っております。 今回も、色いろな国の色いろな子どもたちの絵日記を見せてもらい、わくわくお生 選考副委員長こ智子 選考委員 「グローバルな地球社会」という意味で捉えると、子どもたちの絵にはふたつの傾向があり、ひとつは、いわゆるバーチャルなテレビ、映像、あるいは動画・漫画などの影響が色濃く見えます。しかし、一方で、リアルにものを見るという、子ども自身の「ものを見る目」も育ってきています。たとえば、日本のグランプリ作品は、自分が抱いたチャボの姿を顔の正面から描いており、自分の頭のイメージにある鶏を描くのではなくて、自分の目が見た姿を描いていました。自分の「ものを見る目」を信頼して描きこんでいたところが、色の強さと相まって、素晴らしい作品になっています。 全体を通して作品を鑑賞すると、子どもたちが「グローバルな地球社会」の影響を受けつつも、自分の身の回りの出来事や、かわいがっている動物などを通して、自分たちの「ローカルな地域社会」の素晴らしさを一生懸命表現しようとしている、そこに子どもたちの未来が約束されています。年齢の子どもが表現できていたことが特に印象的でした。「どういう画材を使っているのかな?」ということや、「それぞれの国の美術教育の中に、色いろな伝統工芸の技法が入っているのかな」ということなどを思いながら、興味深く見ていました。 今期は、子どもたちの絵日記の内容が少し都市化してきたな、という印象があります。「ひとつの生活水準」としてグローバルに近付いてきたということもあるでしょうし、コロナ禍において世界とインターネット等で繋がる機会が増えたということもあったからでは、と思います。 子どもたちの視点が、外に向いているというよりは、自分の生活圏の中にある世界の情報や、インターネットの中の情報に向いてきているのかな、というような感想を、国内選考会、国際選考会のどちらでも持ちました。の作品から元気をもらい、とても嬉しい気持ちで審査させていただきました。 グランプリに及ばなかった作品もありますが、どの作品からも教えてもらうこと、発見することがありました。例えば今回、モンゴルでラクダをテーマにした作品がありましたが、私の知っている、見たことのあるラクダとは違い、夢のある素敵な姿で描かれていてとても印象的でした。 この絵日記事業は、日本の子どもたちを中心とした人たちに、アジアの子どもたちが何を考えて、どんな暮らしをしてるか、ということを知ってもらえる、とても素晴らしい取り組みだと思っています。これからも子どもたちには、多様な作品を通して、お互いのことを伝え合ってほしいと思います。 とても元気をもらえて嬉しかったです。しました。学校に行き、ご飯を食べ、家に帰って遊び…と、ついどこの国でも同じだと考えてしまいますが、実はその国の習慣や気候、価値観など、様々なことによって随分生活は違います。 この事業に審査員として参加してから、アジア各国の子どもたちの描いた数多くの絵日記を見てきました。つくづく思うのが、生活の進歩というものに関して、国によっての違いが小さくなってきたな、ということです。デジタル技術の発達により、これからはお互いの国の子どもたちがもっとお互いの国のことを知る、そういった機会が増えていくのだろうな、と予想しながら審査をしておりました。本当に楽しいひと時でした。 知らなかった習慣、どんな暮らしをしているのか、何を感じているのか…お互いに「知る」ということが、理解し合う第一歩だと思っております。素晴らしい体験をありがとうございました。えてきました。アジアの発展ぶりが絵でもわかるのだなと感心しました。 今回の特徴は、どこの国でもCOVID-19によって休校になったり、外に遊びに行けなくなったりしたことを描いていたことです。 子どもたちは、そんな日々をどう過ごしていたのか。絵日記で、その様子がわかりました。 みんな不自由な暮らしながら、それでも家にいて想像の翼を広げていた子どもたちがいたことを嬉しく思いました。 それにしても自宅でリモート学習することができた子が多かったことには驚きました。アジアの国々では、ここまでデジタル化が進んでいたのですね。翻って日本はどうかと、思わず慨嘆してしまいました。 アジアは多彩ですから、政情不安な国も含まれていますが、子どもたちの明るい絵日記には救われる思いがしました。コロナ禍に負けない子どもたちの未来が楽しみです。70ち

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